昼休み
「すまん!クラウド。英雄に呼び出し食らっちまったから、先にメシ食ってて」
ザックスはそういって汚い財布を投げてきた。
ぅわっと反射的にそれを受け取るクラウド。
「俺の財布!売店で俺の分も買っといてくれ!頼む!!」
クラウドの返事を待たずにさっそうと人ごみに消えていく。
財布を託されたクラウドはとりあえず売店に向かう。
売店にはいつものおばちゃんが張り裂けそうな笑顔でパンを売っている。
「はい、いらっしゃい可愛い坊ちゃん。今日は何かね?」
可愛い坊ちゃんという言葉がひっかかるがこれにはもう慣れた。このおばちゃんに初めて会ったときから可愛い坊ちゃんと呼ばれている。きっと俺達との年の差を埋める彼女にとっての最善の行為なのだろう。
「じゃあ…あんぱんと牛乳を一つずつ、それから…」
(ザックスはいつものでいいよな?)
「それから、いつものをあるだけ」
おばちゃんはガハハと笑って”いつもの”をあるだけ袋に詰めてくれた。
「1人で食べるのかい?ガハハ。坊ちゃまも男だね〜」
「エアリス!早く!早く!」
ティファは今日こそ1日限定30個のクルクルの真ん中にチョコが入ったパンを食べたくてエアリスを急かす。
「もう〜ティファったら女の子らしくないよ?パンくらいで騒がないでよ〜」
エアリスはノコノコ歩いている。足元に咲く花が気になるらしい。
「エアリス、あのクルクルのパンはね、1日30個限定なの!いつも昼休み直後には即売り切れ!クルクルのパンを食したのは英雄だけとも言われているわ!それくらい幻と言われているクルクルのパンなの!ただのパンではないの!あの英雄が最初に食べたパンでもあるの!」
ティファは手振り身振りでクルクルのパンへの思いを語る。英雄が食べたかどうかはティファには興味はなかったが、「英雄」という言葉を出せばエアリスが乗ってくると思ったのだ。
「英雄がそんなクルクルのチョコパン食べるのかな?」
エアリスは視線を花からティファに移して微笑んだ。
「食べるのよ!あの英雄さえ欲したパンなのよ!食べてみたいわ。」
「あはは。なんだか大袈裟だね。私は後から追いつくから、先にその英雄も欲したパンを買いに行っていいよ!」
エアリスはのほほんとした女の子だぁとティファはつくづく思った。
「わかった!ありがとう!エアリスの分もとってきてあげるからね★」
ティファのリミットゲージは満タンだったのか、どひゅーん!とあっという間にティファの姿は見えなくなっていった。
つづく